「沖縄市の沖縄戦 市民が語り伝える戦さ世」開催にあたって

 令和元年度、沖縄市は『沖縄市史』第五巻戦争編を発刊いたしました。「戦争編」では本市における沖縄戦の特徴として、米軍上陸から3日間で占領され、嘉間良を中心に「キャンプ・コザ」などの民間収容所が置かれたこと、同時に米軍基地の建設が始まり、これが戦後の「基地の街」の形成の原点になると共に、多くの地域が基地にとられ人々の帰郷を阻んだことなどを紹介しております。
 これら本市のあゆみについては写真や文書など、多くの史資料が明らかにしております。しかし一方で、その時代を生きた人々の記憶も本市のあゆみを語るには欠かせません。沖縄市では、長年にわたって多くの市民の皆様にご協力いただき、戦争体験証言を集めてまいりました。墓で戦火を凌ぎ、山中で飢えや病気に苦しめられ、家族を失い、故郷を目指し戦場を逃げ延び、慣れない収容所での衣食住、そして生き延びる為の「戦果」等々、人々の体験には実にさまざまな場面があり、一つひとつが「戦さ世」の実相を浮かび上がらせます。
 今年は沖縄戦から75年という節目の年となります。「4分の3世紀」というと長い年月が経ったかのように思えますが、人びとの記憶は今なお色あせることがありません。市民一人ひとりによって語り伝えられる「戦さ世(イクサユー)」に触れることで、本市のあゆみを再認識し、そして市民の皆様それぞれの「これから」を考えるきっかけとなれば幸いです。

 最後に、貴重な証言や各種資料をご提供いただきました関係各位・関係機関の皆様へ心から感謝申し上げます。